オンラインでの支払いが、場所やビジネスの規模を問わず、誰にとってもシームレスで安全かつアクセス可能になる世界。これはStripeが実現に貢献してきたものです。オンラインで商品を購入したり、サブスクリプションサービスに簡単に登録したりした経験はありますか?その裏側では、Stripeが機能している可能性が高いでしょう。
Stripeは、あらゆる規模のビジネスが収益を拡大するための金融インフラプラットフォームです。スタートアップからFortune 500企業に至るまで、世界中の数百万もの企業が、オンラインおよび対面での決済処理、金融サービスの組み込み、カスタム収益モデルの構築、そして最終的には収益性の高いビジネスの実現のためにStripeを利用しています。Stripeは、コスト削減、収益増加、およびビジネス運営の効率化を目的とした、完全に統合された金融および決済プロダクトのスイートを提供しています。
概要
社名:Stripe, Inc.
国:アメリカ合衆国
設立年:2010年9月
業種:フィンテック
評価額:915億ドル(2025年2月時点)
評価額の推移
年 | 評価額(米ドル) |
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2021 | 950億ドル |
2022 | 740億ドル / 700億ドル / 144億ドル(Wikipediaの情報、おそらく古い) |
2023 | 500億ドル |
2024 | 650億ドル / 700億ドル |
2025 | 915億ドル |
歴史:
年 | 出来事 |
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2010 | パトリック・コリソンとジョン・コリソン兄弟により、カリフォルニア州パロアルトで設立 。創業者らがMITとハーバード大学に在学中にアイデアが生まれた 。 |
2011 | ピーター・ティール、イーロン・マスク、セコイア・キャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツ、SVエンジェルから200万ドルの投資を受ける 。プライベートベータ版を公開 。9月に一般公開 |
2012 | 本社をサンフランシスコに移転 。Stripe Connectを発表 。シリーズA資金調達(1800万ドル) 。シリーズB資金調達(2000万ドル) |
2013 | 初の買収:Kickoff 。カナダと英国に進出 |
2014 | シリーズB資金調達(8000万ドル) 。評価額が34億ドルに達する 。シリーズC資金調達 |
2015 | シリーズC資金調達(1億ドル) |
2016 | Stripe Atlasを発表 。シリーズD資金調達(1億5000万ドル) |
2017 | 評価額が100億ドルに達する |
2018 | Stripe Radar と Stripe Billing を発表。Stripe Issuing を導入 。シリーズE資金調達(2億4500万ドル) |
2019 | Stripe Terminal を発表 (当初は米国のみ、後に拡大 )。Stripe Capital を発表 。シリーズG資金調達(2億5000万ドル) 。本社をサウスサンフランシスコに移転することを発表 |
2020 | 評価額が360億ドルを超える 。Paystack を買収 。シリーズG資金調達の延長(6億ドル) |
2021 | 6億ドルの資金調達後、評価額が950億ドルに達する 。TaxJar を買収 。Stripe Identity、Link、Payment Links を発表 |
2022 | FordとSpotifyと提携 。AppleとのTap to Payに関する提携を発表 。Stripe AppsとFinancial Connectionsを発表 。レイオフを発表(14%) |
2023 | シリーズI資金調達(65億ドル、評価額500億ドル) 。OpenAIとの協業を発表 。最適化されたチェックアウトスイートが100以上の支払い方法に対応 |
2024 | セコイア・キャピタルが700億ドルの評価額で株式を売却する機会を提供 。Lemon Squeezyを買収 。総決済額が1兆4000億ドルに達する 。Bridgeを買収 |
2025 | 二次株式公開により評価額が915億ドルに上昇 。レイオフを発表(約300人) |
社是:インターネットのGDPを増やす,インターネットの経済インフラを構築する
公式サイト:https://stripe.com/
企業の強み
開発者第一主義と容易な統合: Stripeは創業当初から開発者に重点を置いており、ウェブサイトやアプリケーションへの決済処理の統合を簡素化する、十分に文書化された使いやすいAPIを提供しています。有名な「7行のコード」のスニペットは、この簡便さを象徴するものとなりました。この統合の容易さは、開発時間と複雑さを大幅に削減し、あらゆる規模のビジネス、特にスタートアップにとってStripeが好まれる理由となっています。
包括的かつ統合されたプラットフォーム: Stripeは、基本的な決済処理だけでなく、サブスクリプション管理(Stripe Billing)、不正防止(Stripe Radar)、対面決済(Stripe Terminal)、マーケットプレイス向けのツール(Stripe Connect) など、幅広いサービスを提供しています。この統合されたアプローチにより、企業は複数のベンダーと連携する必要がなくなり、業務が効率化されます。
グローバルな展開と多様な決済方法への対応: Stripeは、135以上の通貨と多様な決済方法に対応しており、企業は世界中の顧客に対応することができます。このグローバルな展開は、国際的に事業を拡大しようとする企業にとって不可欠です。
イノベーションと将来のテクノロジーへの注力: Stripeは、人工知能(AI)やステーブルコインなどの新興テクノロジーへの投資に力を入れています。同社は、AIへの投資が成長を促進し、AIスタートアップを含む新規顧客を引き付けていることを強調しています。ステーブルコインのオーケストレーションプラットフォームであるBridgeの買収は、この先見的なアプローチをさらに示しています。
強力な評判と信頼性: Stripeは、Amazon、Shopify、Github、Yelp、Spotify、Uber、TED、Lyftなどの主要企業を含む、世界中の何百万もの企業から信頼される、信頼性、安全性、およびパフォーマンスにおいて高い評判を築いています。その堅牢なインフラストラクチャは、ダウンタイムを最小限に抑え、スムーズなトランザクション処理を保証します。
事業紹介
主要決済処理: Stripeの主要な提供サービスは、堅牢な決済処理プラットフォームであり、企業はクレジットカード、デビットカード、デジタルウォレット(Apple PayやGoogle Payなど)、および現地の決済オプションを含むさまざまな方法を通じて、世界中の顧客からオンライン決済を受け付けることができます。
事業事例: Shopifyのようなeコマース企業は、Stripeを統合して顧客からの支払いを処理し、安全でシームレスな取引を保証しています。
Stripe Connect: このサービスにより、ソフトウェア開発者は決済機能を自社製品にネイティブに組み込むことができ、複数の当事者が取引できるマーケットプレイスやプラットフォームの作成が可能になります。
事業事例: Twitterが一部のユーザー向けに暗号通貨による支払いを試験的に行う際、Stripe Connectを利用して決済処理とKYC要件に対応しています。
Stripe Billing: サブスクリプションベースのモデルを持つ企業向けに、定期支払いの管理、柔軟なサブスクリプションプランの作成、請求書の処理を行うツールを提供します。
事業事例: ストリーミングプラットフォームやSaaSプロバイダーは、Stripe Billingを利用してサブスクリプション料金の自動請求と顧客アカウントの管理を行っています。Spotifyもこの目的でStripeと提携しています。
Stripe Radar: 機械学習を活用してトランザクションデータを分析し、不正なアクティビティを特定してブロックすることで、企業がリスクを最小限に抑え、収益を保護するのに役立ちます。
事業事例: オンライン小売業者はStripe Radarを使用して、不正なトランザクションを自動的に検出し、防止することで、チャージバックを削減し、収益を保護しています。
Stripe Terminal: Stripeのプラットフォームと統合された物理的なクレジットカードリーダーを通じて、企業が対面決済を受け付けることを可能にし、オンラインとオフラインの両方のトランザクションに対して統合された決済ソリューションを提供します。
事業事例: アラスカ航空は、Stripeを搭載したiPhoneのTap to Payを使用して、空中で非接触型決済を行っています。
Stripe Issuing: オンラインビジネスが独自の物理および仮想のクレジットカードとデビットカードを作成することを可能にし、経費管理と支払いのための新たな可能性を開きます。
事業事例: Alternative Airlinesは、Stripe Issuingを旅行サービスに利用し、承認率を高めています。
Stripe Capital: Stripeプラットフォームを通じてトランザクション履歴と収益に基づいて、対象となるStripe加盟店に資本へのアクセスを提供し、ビジネスの成長を支援します。
事業事例: 季節的な変動を経験する企業は、Stripe Capitalを利用してオフピーク時に資金にアクセスできます。
Stripe Atlas: 特に米国以外の起業家が米国企業として登録するのを支援するために設計されたプラットフォームであり、オンラインビジネスを開始および拡大するために必要なツールとリソースを提供します。
Stripe Tax: 30か国以上とすべての米国の州で売上税、VAT、GSTの計算と徴収を自動化し、国際的な事業を行う企業の税務コンプライアンスを簡素化します。
Stripe Identity: Stripe自身のリスクおよびコンプライアンスプログラムで使用されているものと同じインフラストラクチャ上に構築されており、オンラインビジネスがユーザーの身元を確認できるようにします。
Stripe Apps: ビジネスがサードパーティのアプリケーションを統合して業務を簡素化し、Stripe App Marketplaceを通じてStripeエクスペリエンスをカスタマイズできるようにします。
Stripe Financial Connections: ビジネスが顧客の銀行口座に直接接続して、検証、残高確認、および支払いの失敗の削減を行うことを可能にします。
Data Pipeline: Amazon RedshiftまたはSnowflake Data Cloudにデータを保存するStripeユーザー向けのツールで、Stripeデータを同期して他のビジネス情報と組み合わせて分析できます。
Payment Links: ノーコードの製品で、ビジネスはチェックアウトページのリンクを作成して、ソーシャルプラットフォームやダイレクトチャネルで支払いを受け付けることができます。
創設者
Stripeは、アイルランド出身の兄弟であるパトリック・コリソン(CEO)とジョン・コリソン(社長)によって2010年に設立されました。
パトリックは、プログラミング言語LISPに関するプロジェクトで、アイルランドの若手科学者コンテストで優勝しました。ジョンは、アイルランドの卒業証書試験で史上最高点を獲得しました。
兄弟は2006年に米国に移住しました。彼らはeBayの出品者向けの追跡ソフトウェアのスタートアップアイデアでY Combinatorに応募し、最終的に2008年に彼らのスタートアップAuctomaticが買収されました。
2009年、ジョンはハーバード大学に入学し、MITにいたパトリックの近くにいました。彼らはオンライン決済の難しさに気づき、2009年または2010年にStripe(当初は/dev/paymentsと呼ばれていました)の開発に着手しました。彼らは2010年の秋に大学を中退し、Stripeにフルタイムで取り組むことにしました。
Stripeの最初の資金調達は、2010年にY Combinatorから行われました。
彼らのビジョンは、中小企業が世界中のどこからでも簡単に支払いを受け付けられるようにする決済プラットフォームを作成し、オンラインコマースの複雑さを簡素化することでした。彼らは、従来の銀行システムの欠点や、PayPalのようなプラットフォームの開発者統合の課題に対処することで、既存のソリューションを改善することを目指しました。
コリソン兄弟は、2023年2月現在もStripeを率いており、パトリックがCEO、ジョンが社長を務めています。
彼らの使命は、ビジネスがデジタル経済で成長し繁栄するための経済インフラを構築することにより、「インターネットのGDPを増やす」ことです。彼らはオンラインコマースを民主化し、経済的機会を拡大することを信じています。
将来性
Stripeの将来性は、オンラインコマースの継続的な成長と、AIやステーブルコインなどの革新的なテクノロジーへの継続的な投資によって、非常に有望であると考えられます。
同社は2024年に1兆4000億ドルの総決済額を処理し、前年比38%増という驚異的な成長を示しており、ビジネスの勢いが強いことを示しています。この決済額は、世界のGDPのかなりの部分を占めています。
Stripeは収益性が高く、今後もその状態を維持すると予想されており、将来の成長と投資のための強固な基盤を提供しています。同社はグローバル展開の拡大に注力しており、新たな市場と収益源を開拓しています。
Stripeが重視するAI主導のイノベーションは、既存顧客の収益増加、新規ビジネスの獲得、企業の急速なスケールアップに引き続き貢献すると期待されています。同社のプラットフォームを利用するAIスタートアップの間で急速な成長が見られています。
Stripeはステーブルコインをグローバル金融における変革の力と見なしており、Bridgeのような企業買収を通じてこの分野に積極的に関与しています。
高い評価額にもかかわらず、StripeはIPOの計画を当面立てておらず、非公開企業として長期的な成長とイノベーションに注力しています。
まとめ
Stripeはフィンテック業界において支配的な勢力として台頭し、企業がオンラインで支払いを受け付け、財務を管理する方法に革命をもたらしました。先見の明のあるコリソン兄弟によって設立されたStripeの成功は、開発者第一主義のアプローチ、包括的なサービススイート、グローバルな展開、イノベーションへのコミットメント、そして強力な評判に起因すると言えます。
数行のコードから始まったStripeが、現在の915億ドルを超える評価額に達するまでの道のりは、デジタル経済における現実世界の課題に対処するための、適切に実行されたビジョンの可能性を示すものです。その影響は決済処理にとどまらず、あらゆる規模の企業がオンラインで成功できるよう支援することで、インターネットのGDP増加に積極的に貢献しています。
ITプロフェッショナルにとって、Stripeを理解することは非常に重要です。それは、シームレスで統合され、開発者中心の金融インフラの未来を表しています。次世代の画期的なアプリケーションを構築している場合でも、eコマースプラットフォームを管理している場合でも、あるいは単にユニコーン企業のダイナミクスに興味がある場合でも、Stripeはイノベーション、顧客重視、戦略的成長に関する貴重な教訓を提供します。
StripeがAIのような最先端技術への投資を続け、ステーブルコインの可能性を探求するにつれて、IT業界と金融業界への影響は増大する一方です。Stripeは単なる決済処理業者ではなく、インターネット経済の未来を築く主要な設計者なのです。
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